「よし!12時になった!」
嬉しそうな柚子の声に芽衣は首をかしげて考える。今日は日付が変わるまで起きててくれと柚子がうるさいのでその通りにしてるが、一体何だと言うのだろうか。
「何なのよ一体」
「今持ってくるから待っててね〜」
「・・・?」
にこにこ笑いながら柚子がはいこれ、とマグカップを差し出す。
「?」
「これホットチョコレートだよ、飲んで飲んで」
「ホットチョコレート・・・?」
「あ、知らない?んっとね。要するに溶かして飲むチョコレート味の飲み物だよ」
「それはわかったけど、これが一体なんなのかしら?」
「え、芽衣マジでわかんないの?」
「?」
「今日は何の日か知らない?」
「今日・・・。2月14日よね」
「うん!」
「・・・?何かあったかしら」
芽衣の言葉に柚子はため息をついて脱力する。
「今日はバレンタインだよ、バレンタイン!」
「ああ。そういえばあったわねそんな日」
「いやあったわねじゃなくてさあ。バレンタインっていったらこう、恋人同士が・・・って芽衣聞いてる?」
「あ。それで日付が変わるまで起きててっていったのね」
「そう!で、このホットチョコレートはあたしからのプレゼントだよ!」
「これはどこで買ったのかしら?」
「え?あたしが作ったんだよ」
「そうなの・・・?」
うん、とニコニコ笑う柚子を見て芽衣はホットチョコレートの入ったマグカップを見つめる。これを手作りしてしまうとは。ちょっとすごいかもしれない。その才能と努力を勉強にも・・・と思ったがそれは言わないでおく。
「さ、飲んで飲んで!」
柚子に促されるまま一口飲んだ。
「結構甘いのね」
「え?あれ?甘さ控えめにしたんだけどおかしいななんか間違えたかなあ」
「別にいいわよ」
と、芽衣はまた飲もうとしたがじっと見つめてくる柚子の視線に気が付く。
「何?」
「あ、いやその。味見してもいいかなって」
「別にいいけど」
と、顔を何気なくあげたのと同時に柚子にぐっと引き寄せられる。
「ちょ、何・・・、んっ・・・」
予想していなかった突然のキスに思わず持っていたマグカップを落としそうになったがなんとかこらえる。落としたらこぼしてやけどしてしまうし笑えない。
「はぁ・・・っ」
唇が離れてお互い息をつく。
「ほんとだ、結構甘いね」
「・・・」
「ん?何怒ってんの?」
「別に」
「あ、そうか!」
「?」
「色々してほしくなっちゃったわけだね!」
「なんでそうなるのよ、って、何して、んっ」
「あ、ほらやっぱりこんなになってんじゃん」
「あなたね。お母さんいるのよわかってるの?」
「うん。だから声我慢して?」
「それって私は我慢してつらいけどあなたは何も・・・て、ちょっと何でそんなところに顔近づけ」
「すぐ終わらせるから大丈夫だよ」
「少しは人の話を聞い、んっ・・・やだ、やめっ・・・」
敏感な場所を舌で舐められてその感触に抵抗しようとするが力が入らずできない。
声を荒げそうになって思いとどまる。隣の部屋にいるお母さんに聞こえたらシャレにならない。
「・・・っ、ん・・・っ」
腰が溶けてなくなりそうな快感に酔いしれる。
声を出してはいけないというのは結構つらいものだなと頭の片隅でぼんやり思った。
「あっ・・・や、もう・・・っ!」
すぐ終わらせるからという柚子の言葉の意味を理解するのと頭の中が真っ白になって何も考えられなくなるのは同時だった。
「・・・〜〜っ!!」
達してしまって脱力してしまったけどなんだか悔しくて柚子を睨みつけて文句を言ってやった。
「・・・ばか」
けなすように言ったのに、柚子が嬉しそうに笑ったから。
何を言っても無駄なのだとあきらめるのだった。

「・・・?」
気が付くともう朝だった。
「あ、芽衣起きたね」
「あれ?私・・・」
「芽衣寝ちゃうんだもんなあまいったよ」
「寝て悪かったわね。で、起きるから離れてくれないかしら」
「えー?いいじゃんもう少しこうしてたいよ〜」
「姉のくせに妹に甘えるのやめなさい」
「いつもは芽衣を甘やかしてるんだからたまにはいいじゃん」
「私がいつあなたに甘えたのかしら」
「あはは照れない照れない」
「・・・」
「え、何怒ってんの?」
「うるさい」
「怒ってんじゃん〜」
「いいから黙りなさい、少し静かにできないの?」
「え、うるさい女は嫌い?」
「わかったから少し口離して」
「あっやっぱり耳もとでしゃべると感じ・・・ってわかったそんな怒らないでよ〜」
しばらくの沈黙の後柚子が呟く。
「あのさ。おはようのキスしてないからしてもいいかな?」
芽衣はため息をついてから答えた。
「・・・好きにしなさい」






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