放課後の図書室は意外にも人が少ない。芽衣のために勉強にはげむようになってからそれに気づいた。ペンを手にしながらなんとなく顔をあげると芽衣が少し遠くだけどいるのが見えたのであたしは声をかける。 「おーい、芽衣〜」 あたしが呼ぶと芽衣はこちらに気づいてゆっくり歩いてくる。走ったりしないあたりはさすがお嬢様。 「あなたここで何してるの?」 「見ての通り勉強だよ」 「そう。あなたこの間のテストの成績すごかったわね」 「そうかな?9位だし芽衣のレベルには全然追いついてないけどね」 あたしの言葉に芽衣は少し顔を曇らせる。 「私のために勉強してくれているのは嬉しいけれどあまり無理ないでほしいのよ。あなたはお仕事してるお母さんの代わりに家事とかもやっているのだし」 「大丈夫だよ、今まで遊んでた時間を勉強にかえてるだけだから。芽衣こそ放課後まで校内点検だなんて忙しいじゃん?」 「別に私はいつものことだもの」 いつのまにかあたしの目の前に立っていた芽衣はあたしの話をきちんと聞くためか片手を机の上につきながら顔を近づけていた。芽衣はやっぱり礼儀正しい。お嬢様なせいもあるけど要は真面目なんだと思う。なんとなくその手にあたしの手をそっと重ねると芽衣が少しためらいながらもその指をからませてくる。 「芽衣、誰か見てるかもよ?」 「別にかまわないわ」 「なるほど、生徒会長を咎めるやつなんていないみたいな?」 「そんなこと考えてないわよ失礼ね」 いつのまにか息がかかるくらい顔が近くて。鼻先が少し触れてくすぐったい。 少しの沈黙の後、どちらからともなくそっと唇をあわせた。 「ふふ、これで勉強頑張れるよ」 「それはよかったわね」 見ると芽衣の耳が真っ赤なのでなんだか嬉しくなる。 「ごめんなさいそろそろ生徒会室にいくわね」 そう言って絡めていた手を離した芽衣の手をあたしは掴んだ。 「?柚子?」 「・・・さっきのお礼だよ」 そうつぶやいて芽衣の指輪をはめてある手にそっとキスをした。 |