今は朝。芽衣が早起きして予習したいというのであたしも付き合っている。
何故あたしまで早起きしてるかというと芽衣は目覚ましでも起きられないからあたしが起こさないといけないからである。いやそれは別にいいんだけど。
今朝はママが早朝に仕事に出かけてしまったので二人きりなのだった。
朝ごはんはもう前日に仕込んであるから、あとは芽衣が予習終わったら食べて学校に行くのだけど。
あたしたちはリビングにいて、芽衣はもちろん予習、あたしはというと。
「あー!!やっべー!やられちゃうじゃん!!」
そう。朝早くにやってる(子供向けの)特撮ヒーローものを見ている。
これが結構おもしろいんだなあ。後ろにいる芽衣の視線が痛いが気にしない。
好きなテレビ見てるだけなんだ、あたしはおかしくないぞ、うん。
「げ!!子供を人質にとるとはサイテーだなこいつ!マジむかつく!」
「・・・柚子」
ん?なんか後ろで声がしたような気がする。気のせいかな。
「今だ!変身しろ変身!!」
「ちょっと、柚子少し静かに・・・」
「おー!?変身シーンきったーよー!!」
あたしはとっても盛り上がっていたので近づいてくるその気配に気づかなかった。
「おーし!!そうだ!!そこだやっつけ・・・え??め、芽衣何を・・・んんっ・・・!」
頬に触れる芽衣の手の感触と唇が触れ合う感触で、キスをされたのだと数秒遅れで気づく。
「・・・静かにして」
「う、うんわかったごめん・・・」
顔色ひとつ変えずそのまま席について予習を再開する芽衣。
それとは正反対に、あたしの心臓はバクバクドキドキの挙動不審。もうテレビどころじゃない。
そりゃ確かにうるさくしたあたしが悪いけど無理やりキスすることないじゃん・・・。
「・・・柚子」
「は、はい??」
「予習終わったから、朝ご飯食べるわよ」
「う、うん」
そうだ。ご飯食べればこのうるさい動悸も収まるはず。
そんなことを思いながらあたしは二人分のご飯を用意するべくキッチンへ向かうのだった。

というわけで(?)今は学校のお昼休み。
「ん?ユズっちどこ行くんだ?」
「あー。芽衣にお弁当渡しに行くんだよ〜」
「うーんいいなあ」
「え?何が?」
「ユズっちの手作り弁当毎日食べられる会長がうらやましいよ」
「そうかなあ。はるみんも作ればいいじゃん」
「ユズっちみたいにあんなおいしい弁当作れるわけないだろー。ユズっちはいい嫁になるなあ」
「はるみんまたそれ言ってる〜。あ、届けてくるね」
「お〜。行ってこ〜い」
と、教室を後にして生徒会室へと向かう。
芽衣は3回に1回くらいお弁当を持っていくのを忘れるので(寝ぼけてるかららしい)その度にあたしが届けるのだ。
「芽衣〜、いる〜?」
「・・・ええ」
何か作業?をしているようで書類を見つめたまま顔を上げずに答える芽衣。
「ん?ひとりじゃん。ひどいなあみんな芽衣に仕事押し付けて」
「・・・」
「あ、今日はねちょっと開けてびっくりなお弁当なんだよ!」
「・・・」
「お腹すいたでしょ?あたしが弁当箱開けてあげるね!」
「・・・」
「じゃーん!!お姉ちゃん特製ベアーンご飯だよー!!」
「・・・」
「いやーこのかわいいかんじを出すのが大変だったんだよ!!」
「・・・柚子少し静かにして」
「あ!!もしかしてびっくりしちゃった?ねえベアーン食べられて嬉しい?」
「だから少ししず・・・」
「大丈夫!!芽衣がベアーン好きだってことはあたしと芽衣だけのひみ・・・んんっ!!」
芽衣に引き寄せられたかと思うと瞬時に重なる唇。
「・・・静かにして」
「わ、わかったごめん・・・」
真っ赤な顔で心臓ドキドキバクバクなあたしの前で、お弁当の中身を見つめる芽衣。
「食べても、いいかしら」
「もちろん!・・・あ、でもその前に」
「?」
「芽衣を、味見しちゃおうかな」
その頬にそっと手を添えると芽衣が目を閉じたので、そのままそっとキスをした。


そして夜。夕ご飯も終わり、二人部屋で宿題をしている。
「ねえ、芽衣」
「何?」
スマホいじって遊んでるあたしとは違いきちんと宿題に集中している芽衣は顔を上げずに答える。
「ちょっと、はるみんに電話してもいいかな?」
「いいわよ。でも、あまりうるさくしないでほしいのだけど」
「うんわかった。じゃ、電話してるね〜」
スマホを手に取り、はるみんへ電話をする(もちろんライン通話)。
「あ、もしもしはるみん?」
『おー?ユズっちどーした??』
「今、大丈夫??」
『大丈夫だぞー。今映画見てるけど』
「ん?あ、もしかして今日やってるジブリの映画?あれあたしも見たいんだけど宿題あるから録画して明日見るんだ〜」
『お?ユズっちもジブリ見るのか〜。意外だなあ』
「えー?有名なものはなんでもひと通り見てるよ〜」
『この間、耳をすませばがやってたじゃんユズっち見たか?』
「もちろん見たよー!」
『あれキモいよな〜』
「あはは!そうだねあのストーカー男キモいよね!!」
『あれは引くよな〜!』
「そーだよね!!あれ犯罪だよ犯罪!!だってさひたすら図書カードに名前書い・・・ん?ちょ、ちょっと芽衣何する・・・んんっ!」
あたしは思わずスマホを机の上に落とす。
また芽衣にキスされてしまった。今日何回目なんだこれ。
吐息がかかるくらい芽衣の顔が近くて耐えられず頬にそえられてた芽衣の手を掴んで引き離す。
「な、何するんだよっ!」
「あまりうるさくしないでほしいって言ったはずよ」
「そ、それはそうだけど、だからって・・・っ」
「谷口さんと電話してるのにいいのかしら?」
「ああ!そうだー!!」
あたしは慌ててスマホを手に取る。
「もしもしはるみん?ごめん!ちょっとトラブルがっ!」
『おーい。ユズっち大丈夫か?なんか会長がどうとか言ってた気が・・・』
「い、いやいや!!芽衣がそのあのえっとっ。そ、そう宿題やれって脅してきて!!」
『会長こえーな、大丈夫かユズっち?』
「う、うん大丈夫!!ごめんはるみん宿題やるからもう切るね!」
『わかったまた明日学校でな〜』
電話を切り、大きくため息をつく。
で、芽衣に文句を言おうと振り返ると。
「ん・・・??ちょ、ちょっと、芽衣何寝てるの、だめだよ芽衣寝たら起きないんだからちゃんとベッドで寝ないとさ〜」
両手を下敷きにして突っ伏して寝てる芽衣の可愛さに言いたかった文句もどこかへ消えてしまうのだった。


「芽衣。・・・もう寝てる?」
「いいえ、起きてるわ」
背中を向けてた芽衣が、こちらを向く。
「あの。ごめんね芽衣。今日はうるさくして」
「別にいつものことだからいいわよ」
「う、うん。でもさ。黙らせるためにいちいちキスするってのはどうかと・・・」
「・・・嫌ならもうやらないわ」
「ちち違う違う!!嫌じゃない、嫌じゃないよ!」
「じゃいいじゃない」
「あ、いやなんつーか・・・ほらあたしお姉ちゃんだし!」
「・・・つまり、姉だからリードしたいってこと?」
「うんそう!!」
「じゃ、いいわよどうぞ」
「へ??キスしてもいいってこと??」
「リードしたいんでしょ」
「う、うんそうなんだけど・・・」
「眠いから早くして」
「ま、待ってまだ寝ないでっ」
「だから早くしなさい」
「わ、わかった」
芽衣を抱き寄せてキスをした。
もう寝ないといけないしそんなつもりはなかったのだが、だんだんと深いキスになっていく。
無意識なんだろうけどしがみついてくる芽衣が可愛くて、時間を忘れてお互いの口内を貪りあう。
何度目かわからないキスの合間の息継ぎで唇が一瞬離れたときに、芽衣があたしの体を引きはがす
「芽衣?」
「ごめんなさい、もう眠いから・・・」
眠気には勝てない芽衣が可愛くて顔がほころぶ。
「ふふ、わかったもう寝ていいよ。・・・あ、そうだ」
「?」
眠たそうな顔で見つめてくる芽衣を抱きしめる。
「明日も、眠くなるまでキスしていい?」
小さく頷いて、すぐに寝息をたて始めた芽衣の髪を撫でてそっと囁いた。
「おやすみ、芽衣。朝まで離さないから安心してね」





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