帰り道、他愛もない会話も途切れ二人無言で歩く。たくさん話しかけてきそうなはずの柚子が黙っているのは私に気を使っているからなのかそれとも私と同じく久しぶりに会い緊張してるからなのか。
そんなことを考えながらふと柚子の手に目をやる。またさっきと同じくその手に触れたくなって、でも手をつないだりしていいものかためらう。もう、何も自分を抑える理由なんてないしそれに柚子が手をつなぐのを嫌がるわけもないのに私は何を怖がっているのだろう。
でも触れたい気持ちを抑えきれず思い切ってその手に自分の手を重ねた。握ることまではできず触れるだけが精一杯で。柚子が驚いたようにこちらを見る。やはりやめたほうがよかったのか、と後悔していると、柚子がそれを察したのか安心させるように笑って手をしっかり握り返してくれる。嬉しくて仕方ないのに胸が苦しい。とても熱いその手の感触が何だか懐かしかった。このまま手を離したくないから家につかないでほしいとまで思う私はもう重症なのかもしれない。
急に強い風が吹いて寒気を感じ思わず肩をすくめると、柚子が心配そうに聞いてくる。
「芽衣?大丈夫?」
「・・・ええ」
大丈夫と答えたのに私が無理をしていると思ったようで柚子は、
「うーん今日は季節外れで寒いって天気予報で言ってたからあたしは平気だけど普通はやっぱ寒いのかなあ」
しばらく考え込む仕草をして、何かを思いついたように笑顔でこちらを見る柚子。
「じゃあ、こうしようかな」
柚子がつないでる手を自分のポケットに入れた。ただそれだけのことなのに心拍数が跳ね上がる。
「これで少しは暖かいでしょ?」
息が詰まり答えられず頷くしかできない。
何も言わない私をどう思ったかわからないけれど柚子が歩きだしたからそれに合わせて。しばらくまた無言で歩いてると。
「あのさ、芽衣。遠回りして帰ったらだめかな?」
「遠回り?何故?」
よく意味がわからず私が聞き返すと柚子が照れくさそうに笑って言う。
「なるべく長くこうして歩きたいなあと思って」
柚子が繋いでる手を揺らす。
「あ、でも芽衣は寒いから嫌かな?」
「嫌じゃないわ、その・・・」
「うん?」
私の顔を覗き込む柚子の目を見つめながらはっきり言った。
「私も、ずっとこうして歩きたいと思っていたから」
柚子は嬉しそうに笑って頷き、いつもは通らない方の道へ私の手を引いてきちんと遠回りをしてくれた。




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