芽衣と離れてから6年目。今日は店長と会う約束をしている。芽衣を迎えに行けるようになったから、その話をするつもりだ。頑張って勉強して大学に入り、バイトも藍原家の事業もつげるような内容の仕事をした。家も買ったし少しだけど貯金もある。あとは迎えに行くだけ。6年ぶりにあう芽衣はきっとさらにキレイになってるんだろうな。
なんて考えながら小さな喫茶店の中に入るとすでに店長がいた。
「あ、店長!すいません遅れて・・・」
「いやいや僕が早く来ただけだから大丈夫だよ」
とりあえず椅子に座る。
「あの。話なんですが、えっと」
「芽衣さんのことだろう?」
「あ、わかりますか?」
「前にも電話したりしているからね。で、迎えに行く準備はととのったのかな?」
「はい」
「そうか。すごいね、頑張り屋さんだな藍原さんは」
「あはは。いやでも6年かかりましたけど」
「いやいやそれだけきちんと準備したってことだからいいんじゃないかな。それで、迎えに行くわけだね?それについて話があるのかい?」
「あ、はい。あたしが考えてるのは簡単に言うと学院はまあ今まで通り芽衣がやってそれ以外はあたしがやろうと思ってるんです」
「なるほど、僕のかわりにということだね。喜んで譲るよ」
「ありがとうございます」
「僕も解放されるし、僕がお礼言いたいぐらいだよ。おじいさんには僕から話しておくから安心して」
「はい。あの、変なこと聞きますが芽衣と結婚式はしたんですよね?」
「ん?いやしてないないよ?」
「えっ??何でですか・・・?」
「いやただの政略結婚だしね。それに誰も来ないよ、皆忙しいし」
「そ、そっか・・・」
「ああ、言えばよかったね。ちなみに芽衣さんとは本当に何もないから安心して」
「よ、よかったあはは」
「迎えに行くというのは芽衣さんに行ってあるのかい?」
「いえ、言ってないです。芽衣は言ったらたぶん気にするので」
「なるほど。まあこれはもう言ってしまうけど。実は最初の頃何回か芽衣さんと会った時に色々話をしてね。僕には実は好きな人がいてね。それを話したら芽衣さんもいるって言ったんだよ。しかも指輪までもらったくらいの関係だったなんて。すぐにおかしいと思ったよ。だって指輪までもらうほど相思相愛な関係なら別にその人と結婚して藍原家つげばいいのに、それができないわけだよね。だからもしかして相手は女の子なのかなと思ったんだよ。それに加えて藍原さんには結婚のことは言うななんて。だからすぐにわかったね」
「あー。意外と芽衣は完璧なようでちょっと抜けてたりするからなあ・・・」
お互い顔を見合わせ苦笑する。
「それで芽衣さんが言うには今も手紙のやりとりしてるって聞いたけどほんとかい?」
「あ、はいそうです。1か月に一度ですけどね。・・・あ、でも」
「?」
「えっと。ひとつ心配なことがあって。芽衣があたしを好きでいてくれることはわかってるんですけど、あたしが芽衣を好きだってことは芽衣はわかってるのかなあって・・・」
「?いや芽衣さんはわかってるようなことを言っていたよ?」
「え??あれ、だって手紙に好きとかそう言うことは書いたことないんですが・・・」
「そうなのかい?それは不思議だね。まあじゃあ次の手紙にでも書くといいんじゃないかな」
「そうですね、そうします」
「ああ、ごめん、僕はちょっともうすぐ行かないといけないところがあって」
「あ、そうなんですか。すいませんじゃ今日はこの辺で」
「そうだね。君達がうまくいくよう祈ってるよ」
「ありがとうございます」
じゃあ、とお互い挨拶してから店をでた。

家に帰り部屋の中で考える。おかしいな、手紙に好きとかそういったことは書いた記憶はないのになあ。あれかな、やっぱり芽衣は頭いいからわかるのかな。うん、やっぱり芽衣はすごいなあ。
なんて思いながら手紙を書いてたらついいつも通り適当に一気に全部書いてしまった。
どうしようかと思ったけど、次の日曜日に芽衣を迎えに行くし、きっとこれが最後の手紙になるから。
少し考えてから、あたしは手紙の下のほうの空いたスペースに小さくこう書いた。

 【I love only you】 ――私はあなただけが好き。





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