ずっとこうしていたい。 そう思う私はどうかしてしまったのだと思った。 「ほんとに雪ふったね今日」 「そうね」 今、私は柚子の腕の中にいる。 柚子が好きだと気づいてから今日で3日目。 暖房は明日なおるらしい。 なおるということはもうこうしてもらえなくなる、ということだけど。 ずっとこうしてもらいたいなんて言えなくてなんとか理由を考えてみるが思いつかない。 「雪かきとかめんどくさいからやだなあ」 耳元で聞こえる声が心地いい。 「さすがにそこまではつもらないわよ」 「そうかなあ」 時折髪を撫でてくれる指先の感触がくすぐったい。 「ん?あ、もう10時じゃん。明日テストで早いから寝ないとね」 確か部屋に入ったのは8時だったはず。2時間もこうしていたかと思うと顔が熱くなる。 「早く寝よ?」 体が離れて冷たい空気が体に触れる。 それがとてもつらく感じて布団に急いで潜り込んだ。 向かい合うと柚子が照れくさそうに笑いながら私を見つめてくる。それに耐えられず私は視線をそらした。 「明日暖房なおるから今日は我慢して寝てね」 「・・・寒い」 「え?うーん困ったなあ」 じゃあ、なんていって柚子が抱き寄せてくれる。 「これで、大丈夫かな?」 「ええ」 ひどく安心してため息をついた。 「えへへ」 「・・・何笑ってるのよ」 「いや、嬉しいなと思って」 「・・・」 そんな態度をとれば気持ちなんてバレバレなのに柚子はどうも変なところだけ鈍い気がする。 この先もずっとこうしてほしい。 ・・・なんて言えないから何か言い訳はないかと考える。 「あの・・・」 「うん?」 「私は冷え性だからこうしてもらえると助かるわ」 「あはは、じゃこれからずっとこうしてあげるね」 望んだ通りの答えが返ってきてほっとする。 でも寝るときはいいけどそれ以外はどうしたものかと思っていると。 「なんか暖房壊れてラッキーだったなあ」 「・・・実は暖房あっても寒いのよね」 「え?そうなんだ。ほんとに寒がりだね芽衣は」 「女の子はみんなそうよ」 「あの。じゃあたしは何なんですかね」 「さあ」 「うう。きついなあ。でもそんなに寒いんだね、うーん?あ、じゃああたしがあたためてあげるよ」 思ったとおりの展開になってほっとすると同時になぜか胸が苦しくなって深く息をついた。 「もう寝たほうがいいよ、おやすみ」 私が柚子を好きだと知ったら柚子はなんていうだろうか。びっくりするのかそれとも。 なんて考えながら襲ってきた睡魔に目を閉じた。 これからは、ずっとこうしてもらえるのが嬉しいなと思いながら。 |