柚子と恋人同士になってから2週間。私はずっとあることに悩み苦しんでいた。柚子を好きになって叶わないと思っていた恋人という関係になれた途端自分が今まで彼女にしてきたひどいことの数々を思い出し怖くなってしまったのだ。いくら好きになる前とはいえ私が柚子にしてきたことは人としてしてはいけないこと。謝ろうかとも思うのだが柚子は優しいから、心ではどう思っていようが許してくれると思う。だけどその優しさはかえってつらい。あの時は傷ついたとか嫌だったとか本音で私を罵ってくれたほうが楽なのに。過去に柚子にしたことを思い出しては申し訳なくて後悔しつらくてたまらないのだがどうしていいかわからない。
「あの、芽衣?」
考え込んでる私に隣にいる柚子が話しかけてくる。
「何?」
「あ、いや。なんかこう最近悩んでるみたいに見えるんだけど大丈夫?」
隠していたつもりでもやはり柚子にはわかるらしい。つらくてもう限界だから私は正直に言うことにした。
「あの。私はあなたをまだよく知らないときにあなたにひどいことを色々してしまったことを思い出して・・・」
「え?ひどいこと?あたしに?」
柚子は驚き不思議そうにこちらを見る。
「色々してしまったじゃない、まだあなたと姉妹になったばかりの頃に」
「ああ。まあ色々あったけど別に全然気にしてないよ」
そう言って柚子が笑う。やはり柚子ならそう言うのだと思ったが。その本音は言わないであろう優しさに逆に私の中で何かが切れた気がした。
柚子の両腕を私がいきなり強く握ると柚子が慌てふためく。
「め、芽衣??」
「そういう優しさは逆につらいのよ。あの時されたことにどう思ったか、お願いだから正直に言って。そうじゃないと私はあなたに謝ることができないし罪が償えない」
「・・・」
少し間があいたあと柚子が優しく言う。
「芽衣、顔あげて」
柚子の両腕は掴んだままうつむいていた顔を上げると穏やかな目で私を見る柚子の顔。
「あたしを押し倒したりしてきたときのことを言ってるんだよね?それを芽衣は悪いことをしたと思っているみたいだけどそれは違うよ。あれはあたしにひどいことしようとしたわけじゃないでしょ、つらくてどうしようもない気持ちをあたしにぶつけたんでしょ?だって芽衣泣いてたしつらそうな顔してたし。あたしはそれを見て助けてあげたいと思ったし嫌どころか逆に嬉しかったもん。あんなことはあたしにしかしてないんでしょ?あたしにだけ訴えてくれたんだから。だから芽衣はちっとも悪いことなんてしてないんだよ、ね?」
「そう、・・・かしら」
「そうだよ。それに嫌だと思ったらあたしはちゃんというから。確かあたし怒って芽衣を叩いたりしたじゃん?ていうかさ何で急に今になってそんなこと罪に感じて悩むのかな?」
「それは・・・」
「うん」
「その。あなたにしてしまったことが怖くなって」
「何が、怖いのかな?」
「・・・。嫌われる、かと」
私が言うと柚子は嬉しそうに笑いながら言う。
「つまりあたしが好きだってことだよね?」
「・・・!」
そうだ。嫌われたくないのは柚子が好きだから。だけど思わぬ本音を言い当てられてしまいひどく恥ずかしくなり柚子を睨みつける。
「何でそうなるのかしら」
「え、だって嫌われたくないって好きって言ってるようなものじゃん」
「変な解釈やめなさい」
「そんな真っ赤な顔してさごまかせてないよ〜」
「もう寝るわよ」
これ以上耐えきれずベッドに逃げると柚子がついてくる。
「寄らないでくれるかしら」
「隣に寝るんだからそれはできないなあ」
背を向けるのを忘れてつい柚子と向かいあってしまう。その目を見れず顔をそらした。
「・・・そういえば言ってないことがあるんだけど」
「え・・・?」
思わぬ言葉に柚子を見た。やはり、何かあの時は傷ついたとか言うのだろうか。
「あたし芽衣を好きだってこの間言ったけど、もう少し詳しく言うね。芽衣があたしを嫌いにならない限りはずっと芽衣の側から離れないから」
いつの間にか至近距離にある柚子の顔。
「・・・じゃあ私は死ぬまであなたにくっつかれるのね」
私の言葉に柚子は嬉しそうに笑っていつものようにキスをしてくれた。





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