朝の光に目が覚めて。そして予定表をまず見て、昨日のことが夢ではなかったことを確認する。昨日お父さんがすべて教えてくれたのだ。柚子が私と一緒にいたいと思ってくれて柚子自身はもちろんお父さんや色々な人が私のために動いてくれて。そして私は結婚もすることなく学院を継ぐことになり、柚子とずっと一緒にいられることになった。お父さんから話を聞いたときに私は自分は学院のために柚子を捨てたのだから、と言い張るつもりだったけどそれをお父さんに言ったら怒られてしまった。柚子ちゃんがなんのためにここまでしてくれたのかわからないのか、と。初めてお父さんに叱られたことで私は目が覚めたのだった。

色々と忙しく都合もあるので、急遽休日の今日に私の部屋で柚子と合う約束をしている。
そして柚子がこの部屋に来るまであと少し。なんだか緊張してきた。あと期待もある。柚子と会うのはかなり久しぶりたから、つまり柚子も成長というかきっと素敵になっているのだろうからその姿が見たい。
足音が聞こえて、ガチャっとドアが開いて柚子が入ってくる。
その姿に視線が釘付けになった。少し伸びた金色に近い綺麗な髪、少し背が伸びてスラリとした体型。正直見惚れていると。
「・・・久しぶりだね」
聞きたくて仕方なかったその声に我に返る。
「ええ」
しばらく見つめ合う。口下手な私を気づかってのことかやはり柚子が話をしてくれた。
「なんか綺麗になったね芽衣は」
「・・・あなたもね」
私の言葉に照れくさそうに笑う柚子。
「パパから全部聞いてるよね?」
「ええ。あなたが私が学院をついでそして私達二人が一緒にいられるような道を作って実現してくれたことを詳しくすべて聞いたわ。本当に驚いたわ、あなたがそう頑張ってくれていたなんて」
「ん?パパから経過聞いたりはしてないの?」
「私も学院継ぐ準備や勉強で忙しかったからお父さんと連絡はあまりとれなかったのよ」
「あー。じゃいきなり全部聞いたんだね、そりゃびっくりするよね」
「それでお父さんにすごく怒られたわ」
「え?何で?」
「私が拒否したから。そしたら言われたわ。昔お父さんは学院第一だったから母と別れることになった、だから私が今それと同じことをしているって」
「ああ。学院のためじゃなく自分のために生きたほうがみたいな?」
「ええ」
「そうだね、あたしもそう思ったんだよ。それでなんとかしたわけだけど。まあ今回はほんとにあたしが悪いんだよね」
「あなたは別に何も・・・」
「いや、だって。実はねはるみんに全部話したんだよ。そしたらあたしが鈍すぎるってあきれててさ。あたしが芽衣の気持ちに気づいてればこんな風にはならなかったんだから。でも、あのノート読んだときは本当に嬉しかったよ。あれで芽衣があたしを好きだってわかったから」
「でも、お父さんにも言われたのだけど・・・」
「ん?」
「ちゃんと言葉で伝えなさいって」
「それは一般論言ってるだけだから気にしなくていいよ。あたしたちがお互いの気持ちわかってればそれでいいじゃん。芽衣が言えない分あたしがたくさん言ってあげるよ」
「どうせ言うだけじゃないんでしょ」
「あ、わかる?じゃあキス・・・」
「だめ」
「な、何で!」
「私、午後にはでかけるのよ。それにキスし始めたらあなた終わらないじゃない」
「そ、それは。ん?芽衣眠いの?」
眠くなってきて目をこする私を見て柚子が心配そうに言う。
「何だか疲れて・・・」
「じゃ一緒に少し寝よう!」
「いいけどこのベットセミダブルだから狭いわよ」
「狭いほうがいいじゃんえへへ」
「あなた中身は変わってないのね」
「うん、芽衣もそのきついところ変わらないね」
眠いのでお互い布団に潜り込む。
「芽衣、これくらいならいいでしょ?」
と、柚子に抱きしめられる。懐かしい匂いとやっぱり暖かい柚子の体温にひどく安堵する。
「芽衣、顔上げて」
そう言われて何となく顔を上げると至近距離にある柚子の顔。その真剣な眼差しに私は何も言えなくなる。
その手が私の頬に添えられた瞬間思わず反射的に目を閉じるのと同時に唇が重なる。もう触れることはできないと思っていた唇の感触にどうにかなりそうなくらいドキドキする。
たぶん数秒のキスなはずだけどすごく長く感じられた。
唇が離れてまた抱きしめられる。
「おやすみ、芽衣」
柚子と一緒にいられる幸福感を噛み締めながら眠りにつく。
そして夢を見た。柚子と私がお婆さんになって二人で手をつないで歩く夢を。

───それはきっと必ず訪れる二人の未来。

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