「会長、・・・いやメイメイ。起きてくださいな」
今は私とメイメイ二人きりで生徒会室で作業をしていた。メイメイはもちろん一生懸命仕事をしてるのだけどこうしていきなり寝てしまうのはちょっと困ったところである。
まあでも、こんな風にメイメイの寝顔をひとりじめできるのは嬉しいからいいとしよう。
気持ちよさそうに寝てるのを起こすのはかわいそうなのだけどそろそろ下校時刻だから起こさなくては。
「あの、メイメイ?もしもし〜」
声をかけただけでは起きないのでそっとその肩をゆすると、
「ん・・・」
「あ、起きました?もう下刻時間ですから帰りませんと。あ、残ってた作業はやっておきましたからご安心を」
「・・・ありがとう」
「いえいえ。まだ眠いんですの?」
一生懸命目をこすってるメイメイにそう声をかける。
「・・・ええ」
「ちゃんと夜は寝てますの?ていうかメイメイ朝起きれませんでしょ?いつもどうしてますの?」
・・・今考えたらこの質問がいけなかったのだ。
「?どうしてって、どういう意味かしら」
「だから、起きられないんじゃないかと思いまして」
「・・・ああ。柚子に起こしてもらってるから大丈夫よ」
「え・・・?」
「?何?」
「あの。藍原柚子に起こしてもらってるってことは部屋一緒なんですの・・・?」
「ええ」
メイメイと部屋一緒だとはなんとうらやましい。うう藍原柚子が憎いですわ。
「でもほら。メイメイは寝ぼけてベッドから落ちたりするから気をつけてくださいまし」
「・・・ああ。ベッドが広いから大丈夫よ」
「広い?」
「ダブルベッドだから」
「あら。ずいぶん贅沢ですのね」
「え?二人でダブルベッドは贅沢なの?」
「・・・はい?」
「そんなに贅沢かしらね」
「あ、いえそうじゃなくてあの。誰かと一緒に寝てるんですの?」
「?ああ、柚子と寝てるんだけれど」
・・・。ダブルベッドでメイメイと一緒に寝てるとは、藍原柚子許すまじ。
「あ、あの。ひとりで眠れないんじゃつらいですわね」
「柚子は寝相も悪くないし別につらくはないけど」
「そ、そうですのね。でも藍原柚子に迷惑かけられてませんの?心配ですわ」
「そんなことないけれど。どちらかと言うと私のほうが柚子に迷惑かけてると思うわよ」
あら。相手の迷惑を考えるなんてやっぱりメイメイは心が優しいですわ。
「なんか私は寒がりで柚子が暑がりみたいなのよね。だから私が寒くて布団ひっぱるから柚子に迷惑かと心配なのよ」
「ああ、なるほど。って、ちょっと待ってくださいな。もしかして掛け布団一緒なんですの?」
「?ええ、そうだけど」
なんという。ああもう絶対あの女許すまじ。
「柚子は体温が高いみたいなのよね。だからいつも暖めてくれ・・・、あ」
はっとした表情になって言葉を途切らせたメイメイに私は詰め寄った。
「なんですの!?今のはどういう意味ですの!?」
「ごめんなさい忘れて」
「メイメイは私に隠し事なさるんですの!?」
「だって、言ったら姫子が私のこと嫌いになるかと思って・・・」
「そんなこと絶対ありませんわ!神に誓って!」
「でも・・・」
「いいからはっきり包み隠さず言ってくださいまし!」
「じゃあ言うけれど。あの。絶対誰にも言わないでくれる?」
「もちろんですわ!私石よりも口が硬いのですから!」
「・・・あの」
うんうんと頷く私にメイメイが告げたのは予想もしない内容だった。
「私と柚子ね、付き合ってるのよ」
・・・。なんですって??
「こ、恋人という意味ですの?」
「ええ」
「・・・」
「ま、まさか藍原柚子が無理やりっ」
「そんなわけないでしょ」
「あの恋人ということは。そそそういう行為をし、して・・・」
「?そういう・・・?」
「ですから恋人らしいことを」
「そうね」
藍原柚子許すまじ。自然と拳を握りしめた。
「ああ、もう帰らないといけないわね」
「え?あ、そうですわね」
なんか知らないけど今日の夕飯はやけ食いしてしまいそうな気がする。
そんなことを思いながらメイメイと二人で下校したのだった。

「藍原柚子!ちょっとよろしくて?」
次の日の放課後、私は藍原柚子を捕まえてとっちめてやることにした。
「ん?何?どしたの桃木野さん」
「あなたに決闘を申し込みますわ!」
「あ?何を戦うの?」
「メイメイのことですわ!」
「ん?芽衣はゲームとかやらないよ?」
「ゲームじゃありませんわ!恋敵として・・・」
「あ、桃木野さんも芽衣のこと好きだもんね」
「大声でそれを言わないでくたさいな!」
「いや桃木野さんがうるさいんじゃん」
「いいから決闘ですわ!」
「えー?何が言いたいのかわかんないよー」
「人の話聞いてますの!?」
「聞いてる聞いてる、何?」
「・・・昨日メイメイから聞きましたわ」
「うん?」
「あなた、メイメイとお付き合いしてるらしいですわね」
「あー。芽衣言ったのか口軽いなあ」
「メイメイは悪くありませんわ!私が聞き出したんですの!」
「そっか。芽衣は桃木野さんを信用してるんだね」
「そうですわ。私のほうがあなたよりメイメイのこと理解してるんですのよ」
「そうだね芽衣のこと小さい頃から詳しいなんていいなあ」
「ふふふ。ですから私のほうがメイメイのこと・・・」
「あ、じゃあ芽衣が舌長いの知ってる?」
「な、なんですのそれはっ」
「あー知らないんだあ」
「なんで舌の長さなんかわかりますの!?」
「ん?だってキスすればわかるじゃん」
「め、メイメイとそんなこと・・・」
「恋人なんだからしょうがないって」
「そ、それはそうですけどメイメイ嫌がってませんの?」
「嫌だったらあんな声ださないんじゃない」
「一体どういうキスしてますの!?」
「うーん?いや普通がどうかは知らないなあ」
「まさかあなたメイメイと一線超えてるなんてことは・・・」
「いやそれはさすがに芽衣に怒られるから言えないなあ」
「言えないようなことしてますの!?」
「うんそう」
「さらっと言わないでくださいな!?だいたいメイメイがあなたのこと好きになるわけありませんわ!?」
「あー。確かに好きって言わないなあ芽衣は」
「やっぱり!」
「でもこの間好きって言ってくれないねって言ったら、私が好きでもない人と恋人同士になると思うのかって言うんだよ。嬉しかったなあ」
「・・・もういいですわ」
「いや芽衣って好きって言えないのがくそかわいい・・・」
「もういいって言ってますでしょ!?」
このバカ女が好きだなんてメイメイは趣味がおかしいですわまったく。
「あれ?決闘は?」
「もういいですわ」
「あー。じゃあいいこと教えてあげるよ!芽衣はなんでかキスするとき手を繋ぐクセが・・・」
「そんな情報いりませんわ!」
これ以上聞いたら嫉妬心でどうにかなりそうで、藍原柚子を無視して教室から飛び出した。

        ※

「ねえ、芽衣起きてる?」
「ええ」
あたしが声をかけると芽衣はこちらを向いてくれた。
今日の桃木野さんとのことを言おうかなと思ったけどやめた。だってきっと芽衣は桃木野さんを信用してあたし達のことを話したのだろうから。
「なんかさあ。桃木野さんがうらやましいなって思って」
「・・・どうして?」
「うーん。だって。芽衣を小さい頃から知ってるんだもん」
「そんなこと言ったらきりないでしょ」
「ん?」
「例えば水沢さんだって柚子のこと昔から知ってるじゃない」
「何まつりがうらやましいの?」
「ええ」
「・・・えへへ」
「何よ気持ち悪い」
「いや芽衣もあたしのこと知りたいと思ってくれてるのが嬉しいなって」
「・・・今度、あなたの小さい頃の写真見せて」
「うんいいよ。あ、芽衣のも見せてね」
「わかったわ」
芽衣が頷いて、それからあたしに抱き着いてきたので、
「あ、あの、芽衣?」
「・・・寒い」
「あたし暖房器具じゃないんだけど・・・」
「だめ?」
「い、いやだめじゃないけどさあ」
あたしは芽衣を抱きしめ返す。
「どう?あったかい?」
「ええ」
そのまますぐに芽衣は眠ってしまったようで小さな寝息が聞こえてくる。
「うーん寝つきいいなあ」
ちょっと思ったけど夏になったらこういう風に眠れないのだろうか。ふむ、夏はどうするか考えておかないと。
なんて考えてたら眠くなってきた。
「寝てるから、いいかな」
芽衣の額にそっとキスをして。
そのまま額をくっつけて目を閉じて眠りについた。




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