それを言い出したのは芽衣のほうからだった。

「・・・柚子」
ああ、寝坊してしまった。やばいやばい学校遅れる。
ドタバタを支度をしている私をただ、待っていてくれる芽衣。
支度に必死になっていて私は芽衣の呼びかけが耳に入っていなかった。
「うげー!遅刻だ遅刻だやばいー!!」
支度はなんとかすんで慌てて家を飛び出そうとする私。
そこでふと気づいた。私が遅刻しそうってことは今一緒にいる、芽衣もそうだということを。
「あー!!ごめん芽衣!!遅刻したら私のせいだって言っていいよっ」
家をでるべく靴を履き、立ち上がる私の制服の裾をつかむ芽衣。
「ん??何??」
なんか忘れ物でもしてたかな、と考えてた私に、芽衣は少し困ったように、
「・・・名前を呼んだら答えてちょうだい」
小さな声で呟いた。
「え?呼んでたんだ??ごめんごめん。どうかした?」
「あの・・・」
「うん?」
「昨日・・・寝る前にキスしたわよね」
「え!?そそそそうですが!?」
だって、恋人同士ですから!・・・なんて言ってにっこり笑って返したら、また、芽衣は少し困ったような顔をする。なんでさっきからこんな顔してるのかさっぱりわからないけど。
「キスって・・・」
「うん・・・?」
「寝る前しかしないものなの?」
「えっ・・・」
そんなこと考えたこともなかった。必死に考えを巡らしていると、
芽衣は少しため息をついて、こんなことを言う。
「柚子はどうして私にキスするの?」
「は?そ、それは芽衣が・・・す、す・・・」
「す?」
思いもよらない芽衣の質問に私は心臓バクバク、そして顔を真っ赤にして答える。
「好きだから・・・」
そう。・・・と、小さく呟いてひとり納得した様子の芽衣。
「でも・・・」
「?」
芽衣が何を言いたいのかわからなくて、芽衣の言葉を待つ。
「寝る前にしかしないのは何故?」
「えっ・・・」
そんなこと、思ってたのか。きっと疑問を解決しないと気が済まないんだろう。
なんて風に軽く考えてた私はこう答えた。
「あはは。別に、いつでもしたいけどね〜」
でも学校とか、人の目とかあるから。そう答えた柚子に芽衣はこんなことを言いだした。
「・・・じゃあ、今して」
「へ!?」
「・・・へ、じゃないわ。だめなの?」
「いいいえいえっ!?芽衣がいやじゃなきゃいつでもどこでも大歓迎ですがっ!」
「じゃあ、早く」
「う、うんわかった」
芽衣を抱き寄せて、そっとキスをする。
そして・・・と思ってたら。
「待って、遅刻するわ」
「い、いやあの・・・そっちから誘った気が・・・」
でも、確かに遅刻は大問題だ。ぶつぶつ言ってる私に、芽衣は小さな声で呟いた。
「・・・生徒会室で待ってるから」


トントン。生徒会室のドアをノックする。
芽衣は生徒会室でキスするつもりなんだろうか。でも誰かいるんじゃ・・・なんて思ってると、
「・・・どうぞ」
芽衣の声が聞こえてきてドアを開けて中に入る。
「ん?芽衣しかいないの?」
「言ったでしょ。キスするって」
「う、うん・・・」
芽衣のそばまでいく。だめだ、もう我慢できない。
強引に芽衣を抱き寄せて唇を押し付ける。
抵抗せず、そっと私の背中に手を回す芽衣。
幸せすぎて死にそうだった。
芽衣の唇をそっと舌でなぞると、芽衣がビクリと体を反応させる。
それがかわいくて、さらに、その唇の中に舌を入れてからませると、
少し遠慮がちに芽衣も舌を突き出してくる。

・・・だめだ。気持ちよすぎて何にも考えらんない・・・。

芽衣もきっと同じなのだろう。私が芽衣の口内をかき乱すたびに、
芽衣は甘い吐息を漏らす。

何度も何度も唇と舌を絡めあって。
溶け合ってなくなってしまうそうだった。

そんな甘いひと時をぶち壊す学校のチャイム。

仕方なく唇を離す。そして芽衣の言葉に腰が抜けるほど驚く私。
「・・・これから、キスできるときはできるだけして」
「うへ!?」
「だめ?」
「だだだめじゃないよっ!」
「いいの?」
「も、もちろんんですとも!」
いかん、幸せで倒れそうだ。要するに芽衣はキスをしてもらいたかったわけだ。
ひとり納得する私に顔を赤らめて言う芽衣。
「・・・また、家で・・・」
「う、うん。わかった」

これからキス三昧の日々をおくれるのだと思うと本気鼻血だしそうな柚子だった。



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