放課後あたしが何気なく教室に入ると、会長がひとりで何かしているので声をかけた。
「会長、何してんだ?」
「?ちょっと校内点検しているのよ」
「あー。取締りか、大変だなそれは。ちょっと話とかしたいんだけどいいか?」
「ええ、いいわよ」
「んーと。最近ユズっちすぐ帰るんだけど何かあったのか?」
「ああ。今お母さんがお仕事忙しくて全然家にいないのよ。だから柚子が色々しないといけなくて」
「だからか、ふーん」
「柚子とそういう話はしないの?」
「しないなあ。あたしたちそういうことは話さないんだよ、干渉しないっていうか」
「そう。柚子は谷口さんが自分を好きだってことには気がついてるのかしら?」
「いや知らないよ。知らないどころか、この前なんて笑って、はるみんが好きな人は誰?とか聞いてきたぞ」
「なんか柚子なら言いそうね」
「まあ気づかないほうが助かるけどな」
「そういえば、この間なんて私に、芽衣が好きな人は誰?とか聞いてきたわよ」
「は??それマジか?」
「ええ」
「や、やばいなそれは。なんか将来が心配だなあ・・・」
「色々な意味で心配よね」
「成績も悪いしなあ」
「あれでも私と同じ大学に行くつもりみたいよ」
「無謀だなそれは・・・」
「落ちて泣きわめくの想像すると今から頭痛いのよね」
「いや受かったらそれはそれでやっぱり泣きわめくかもな」
「そうね」
「なんか今から目に浮かぶなあ」
「谷口さんはみつ子先輩におこられたりしないの?」
「いつも怒られるぞメールとかで」
「たしか実家とで離れてるのよね今」
「そうそう。とりあえずこの先も逃げるぞあたしは」
「大変ね怖い姉だと」
「ユズっちは怒ったりはしないのか?」
「しないわよ。ずっと楽しそうに笑っているし」
「それはそれで心配だなあ」
「あといちいち泣くのやめてほしいのよね

「笑って泣いてか、ユズっち頭大丈夫かな」
「だめなんじゃない」
「きついな会長」
「みつこ先輩ほどではないわよ」
「まあお互い大変だよな」
「そうね」
「ん?会長も確か親いないんだろ?」
「いないけれど亡くなってはいないから、柚子とは違うのよね」
「あー。そうか。つらいなユズっち・・・」
「それで柚子のお父さんのお墓参りのあとにファミレス行こうとか言うのよ」
「墓参りのあとにファミレス行くのはなんかやだよなあ」
「しかもお墓参りの前にクレープ食べたりするのよ」
「ピクニック気分かよ」
「さらに寝る前に今日は楽しかったねとか言うのよ」
「は、墓参りが楽しいのか・・・」
「まあ悲しまれるよりはいいけど」
「ん?ユズっちはお母さんには言ってんのか?」
「いえ内緒みたいよ」
「なのに楽しむのかわけわからんな」
「趣味が悪いのも困るのよね」
「あー。あたしも実はゆずぼっちあまり好きじゃないんだよなあ」
「あれはまだいいけどこの前なんてスイカのクッション買って喜んでたわよ」
「スイカのどこがかわいいんだよおい」
「あと子供みたいに遊ぶのも困るのよね」
「ん?子供?」
「例えばお風呂で水鉄砲で遊んでいたりとか」
「ユズっち小学生かよ」
「あとだらしないのもこまるのよね服は脱いでほうってあるし」
「あー。まあそのぐらいいいんじゃん?」
「そうだけれど、柚子が着替えるたびに畳んであげるこっちの身にもなってほしいのよね。あとカーテン閉めないで着替えるし」
「げっ。まさか全部脱ぐのか・・・?」
「ええ」
「うわ。それはやばいな。でも夜だけだろ?」
「いえ朝もなのよ」
「マジかよ?女の子の着替えが外から丸見えってか危ないなあ」
「だから私がカーテン閉めるのだけど、誰も見てないとか言って笑うから頭痛いのよね」
「あれか、ユズッち得意の根拠のない自信か。仕方ないなあユズッちは。あ、会長見捨てないでやってくれよ?」
「恋人を見捨てるわけ無いでしょう?」
「まあそうだけどさ」
「あ、ごめんなさいそろそろ生徒会室に戻らないといけないから。谷口さんも柚子のことよろしくお願いするわね」
「あー。言われなくてもバッチリ管理するからまかしときな」
ありがとうと言って会長が去っていったところでスマホが鳴る。学院内だから振動だけど。
「ん・・・?」
画面にはユズッちからのメッセージが来ていた。
 『はるみん教えてよー。今宿題やってるんけどさ!今のアメリカの大統領って誰だっけ?』
・・・。なんか気のせいか頭痛がしてきたような。とりあえずあたしはため息をつきながらユズッちに答えを教えてあげるのだった。

生徒会室での作業が長引き帰りが夜になってしまった。柚子はきっとご飯を用意して待ってくれているはず。急いで玄関に入ると柚子の靴しかなかったのでお母さんはまだ帰っていないようだった。真っ暗だけれどリビングは明かりがついてるので柚子がいるはず。急ぎ足でリビングまでいくとカレーらしき匂い(ちなみに昨日もカレーだった)がしてソファを見ると、柚子が待ちくたびれたのか気持ちよさそうに寝ていた。起こすのはかわいそうな気もしたがもう夕飯の時間だしとりあえず起こすことにする。
「柚子、起きて」
側によりその肩を揺すると柚子が目を覚ましたようで体を起こしたかと思ったら私に抱きついてきた。
「芽衣〜」
「ちょっと、何寝ぼけてるの離れなさい」
「ん?あれ・・・?あ、芽衣服着てるから、夢か。惜しかったなあ」
「あなたね、一体どんな夢見てたのよ」
私が言うと柚子は顔を赤くしながらもじもじする。
「え、えっと。ノーコメントでお願いします」
「だめよ、言いなさい」
「いやその。なんつーかなかなか口にすると露骨な・・・」
「言わないと別れるわよ」
「げ!それだけはやめて〜!」
「じゃ早く言いなさい」
「あ、あの。なんつーか。芽衣と・・・」
「私と、何?」
「一日中あれする夢を・・・」
「あなた、夢でもそうなんてちょっと性欲ありすぎなんじゃないの?」
「そんなことない普通だよ!」
「お風呂で相手がのぼせて立てなくなるまでするののどこが普通なのかしら」
「はいすいません・・・。あ、じゃあさ!」
「何?」
「今ここでするのはどう?」
「お母さん帰ってくるのにできるわけないでしょ」
「あ、いやママからさっき電話あってね、ママ9時半以降に帰るって言ってたから、だからあと2時間以内で済ませ」
「だめ」
「そ、そんな。したかったのに・・・」
この世の終わりみたいにうなだれる柚子を見かねて仕方なく救いの手?を差し伸べることにした。
「キスだけならいいけれど」
「え!やった!芽衣大好き〜!」
抱き寄せられてその激しい口づけに答える。
結局夕飯を食べることも忘れてお母さんが帰ってくるまで夢中でキスをした。




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