「んっ・・・」
夏祭りの後の夜、キスならいいと言ってそれを受け入れてあれからずっとキスし続けてるのだけど。
「・・・ちょっと、柚子」
もうこれで何度目かわからないキスの合間の息継ぎで唇が離れたところでなんとか必死に私は柚子を引きはがす。
「ん?」
不思議そうな顔をする柚子に、息を整えながら言う。
「もういいでしょ」
「え?何で?」
「あのね。物事には限度というのがあるのよわかる?」
私の言葉に柚子はまた不思議そうな顔をする。
「うん?だから、キスだけにしてるよ?」
「そのキスにも限度があるって言ってるのだけど」
「そんなにしてないじゃん」
「あなたね。もう今明け方よ?」
「うん。それがどうかした?」
「だから・・・こう。限度が・・・」
「限度って。んーと。やりすぎたらだめってことでしょ?」
「そうね」
「だから、キスしかしてないよ・・・?」
きょとんとした目で私を見る柚子に思わずため息をついた。
なんて言ったら柚子はわかるのかと考えて必死にわかりやすく説明してみる。
「キスならいいとは言ったけれど、時間が長すぎじゃないかしら」
「嫌なの・・・?」
「そうじゃなくて。こう・・・」
「??」
だめだ。もう強制的に終わりにするしかない。
私は柚子が納得しそうな適当な言い訳を言うことにした。
「今もう明け方だから寝ないと困るのよ」
「え?今夏休みなのに?」
「明日ちょっと昼に本屋に行きたいのよ私」
これはもちろん嘘だがこうでも言わないと柚子が納得しないので仕方なく嘘をつくしかないのだ。
「なんだそっか〜。じゃ、もう寝たいって意味かな?」
「ええ」
「じゃあたしも寝ようかな。それで一緒に本屋に行ってもいい?」
「それは・・・」
しまった。そう来るとは。嘘をひとつつくとまた嘘を重ねないといけなくなるというのは本当だなと思った。
「ん?どうしたの芽衣、考え込んで」
私が嘘をついてるなどと思いもしてないその純粋で澄んだ瞳からは目をそらしながら言った。
「科学の辞書買うのよ。それで帰ってすぐ勉強したいの」
「げっ。やだやだそんな本。じゃああたしパスするよ〜」
「よかった・・・」
「え?」
「な、なんでもないわ」
「うん?あ、もう寝るよね?」
「ええ」
そう言って私が寝ようとすると柚子も寝ようとする。
お互い向かう形になると柚子がくすくすと笑いだした。
「何笑ってるのよ」
「えー。だって。芽衣気づいてないんだなあと思って」
「?」
「芽衣さ、キスし始めたときからずっと手つないでるんだもん」
ほら、なんて言いながら無意識にずっと繋いでいたであろう手を顔の目の前にもってきて手を繋いだまま柚子が笑う。思わず顔がかっと熱くなった。
「・・・いけないっていいたいのかしら」
「あはは照れてかわいいなあ芽衣は」
「うるさい」
「まあまあ怒らない。あ、すぐ眠れそう?」
「そんなすぐは無理よ。まあそのうち・・・」
私がそういうと柚子がそっと抱き寄せてくれる。
「これで、眠れるかな?」
「・・・」
真夏だというのに熱い柚子の体に触れるとひどく安堵してさっきまで感じなかったはずの眠気が押し寄せてきた。
そのまま眠りについてしまう前に柚子に言う。
「柚子」
「うん?」
半分うとうとしながら眠ってしまう前に囁いた。
「・・・続きは、明日勉強が終わったらしていいから」




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