今日は柚子の誕生日。去年と同じくプレゼントを渡すつもりなのだが柚子はやはり自分の誕生日を忘れてるらしくまあまた私がプレゼント渡して驚くんだろう。 なんて思いながら朝食をとるべくリビングへ行くとお母さんがいた。 「あら、芽衣ちゃんおはよう早いわね」 「おはようございます。はい、ちょっとやらなくてはいけないことがあるので早く起きました」 「あら大変ね。そうだ芽衣ちゃん私は今日は少し遅く出勤するからちょっと話してもいいかしら?」 「はい、大丈夫です」 「柚子に内緒で見せたいものがあるのよ」 そう言ってお母さんは何かを持ってくる。 「それは・・・?」 「柚子のパパが亡くなる少し前に撮った写真よ。柚子が2歳半くらいのときのかしらね」 「え?前に柚子はお父さんがいたころの写真はないと言っていたんですが・・・」 「それが1枚だけあるのよ。柚子には何故か言いにくくて内緒にしていたのね」 「そうだったんですね。でも柚子が見ていないのに私が見てもいいんでしょうか?」 「芽衣ちゃんには知っていてほしいの。柚子の小さい頃とパパの姿を」 「はいわかりました」 幼い柚子を見られるのだと思うとドキドキしてくる。はい、と渡された写真を見ると。 そこにはお父さんの腕の中で安心したように眠る柚子の姿。お父さんよりも先に柚子に視線が釘付けになる。その幼い寝顔は毎日よく見る柚子の今の寝顔とかわらなくて。口をばっかりあけてよだれも少しでていることも今と同じ。お父さんと一緒なせいだろうか本当に幸せそうなその寝顔に、言葉にできない感情がこみ上げてきて思わず泣きそうになった。 「これはたまたまパパが朝出かける前にとったのよ。柚子が朝早いせいか起こしても全然起きないから寝かせたままにしておいたの」 お母さんの話に頷きながら今度はお父さんに視線をうつす。柚子と同じ金色に近いキレイな髪、そして照れくさそうにはにかむ笑顔は私の大好きな柚子の笑顔にそっくりだった。柚子はお父さんとのつながりがほしくて茶髪にしたわけだけれど、ちゃんとお父さんに似ていてきちんと繋がっていることを柚子に教えてあげられたらと思った。 「芽衣ちゃん、見てどう感じたかしら?」 「・・・柚子はお父さんにちゃんと似ていると思いました」 「また見たいかしら?」 「はい、機会があればまた見たいです」 私の言葉にお母さんは少し考え込むようにしてからこう言った。 「芽衣ちゃんよかったらこの写真あげるわ」 「えっ。そんな。いいんですか・・・?」 「ええ。実はね私はこれを見るのはつらいのよ。だから芽衣ちゃんが見たいと思うのなら芽衣ちゃんに大事にもっていてもらえるとありがたいのよ。そしたら芽衣ちゃんが好きなときに見られるのだし」 「わかりました、大事にします」 「よかったわ。あ、もうこんな時間ね朝ごはんにしましょう」 「はい」 朝ごはんを食べ終わり部屋に戻ると柚子はまだベッドで寝ていた。側によりその寝顔を見るとやはりさっき見た写真の寝顔と変わらない。幸せそうに見えるけど実はずっとひとりで寂しかったことを私は知っている。もし私が柚子の妹にならなかったらまだ今もたぶん寂しいままだったはず。できることなら生まれた時から柚子の側にいてあげたかったとさっきもらった写真を見たときに思った。 ふと思い出したが今日は書類作業をかなりしなければいけないのだった。本当は柚子と一緒にずっとすごしたいがこればかりは仕方ない。 「ん〜・・・」 柚子が目を覚ましたらしくまだ眠そうな顔でこちらを見る。 「あれ?芽衣もう起きてるの?」 「ええ。ちょっとやらないといけないことがあるから」 「あ、作業あるとか言ってたもんね大変だなあ芽衣は」 「あなた今日・・・」 「あたしの誕生日だよね!昨日思い出したんだよすごいでしょ?」 「覚えてるほうが普通よ」 「少しはほめてよう〜」 なんて言い合いながらふと思いついたことを私は実行することにした。 「柚子。今誕生日プレゼントあげてもいいかしら?」 「ん?いいよ?でも何で朝にし・・・」 柚子が言葉を途切れさせたのは私がその頬に手を添えたから。戸惑うように私を見る目を無視して唇を押し付けること数秒。 「め、芽衣?」 柚子の顔は真っ赤だった。 「誕生日プレゼント、気に入ってもらえたかしら?」 私の言葉に柚子はしばらく不思議そうな顔をしてたけれどやがて意味を理解してくれたようで。 「うん、すごく気に入ったよありがとう」 嬉しそうにはにかむその笑顔はやっぱり写真で見た柚子のお父さんの笑顔にそっくりだった。 |