夕飯の買い物をして外を出るともう夕焼けも消えかけていて少し薄暗くなっていた。初めて買い物した時は戸惑ったけど柚子と一緒に買い物するようになってからはメモに書かれた物を買うことぐらいはできるようになった。 ちなみに今日は柚子がテストでひどい点数をとったせいで特別に補習をうけることになり遅くなるからと柚子のかわりに買い物しているのだった。また今度きちんと勉強教えなくては。 なんて考えながらふと少し離れた右側をなんとなく見て思わず立ち止まった。 その視線の先にいるのは柚子ともうひとり知らない男性だった。道でも聞かれたりしているのかとも思ったがなんだか楽しそうに会話をしている。さらにその男性が私達と同年代にしか見えないから余計に不安になる。 まさか柚子に限って浮気なんて・・・。 嫌な考えで頭がいっぱいになる。だって柚子は本当にモテるから。私についてくる取り巻きなんて私を好きなのではなく生徒会長に憧れてるだけなのだ。でも柚子場合は本気で好かれている。それも恋愛的な意味で。 何故か胸が苦しくなった。 見つかるのは嫌だったのでとりあえず急ぎ足で帰宅することにした。 もうすぐ寝る時間。柚子はなんだか楽しそうにスマホでゲームをしている。このままじゃ不安で眠れないし聞くなら今しかない。 「柚子、ちょっと聞きたいことがあるのだけど」 「ん?」 柚子がスマホを置いてこちらを見る。 「あなた今日夕方男性とお話ししてたでしょう?」 「え?男性?」 柚子が首を傾げる。 「ん?あれかなあいつのことかな?」 あいつ、という言葉に胸が痛くなる。そう呼ぶほどの関係なのだろうか。 「その。あの人はあなたの何なのかしら?」 「・・・は?」 私の言葉に不思議そうな顔をしたと思ったら柚子は急に笑いだした。 「あはは!なんだ嫉妬してるんだ〜!」 「ちょっと笑ってごまかさないでちょうだい」 「ごめんごめん、あのねただの中学の同級生だよ」 「どうしてこの辺にいるのかしら」 「なんかねこっちにくる用事があったんだって」 「でもあんな楽しそうに・・・」 「いやまさか同級生に会って険しい顔したりするわけないじゃん〜」 「それはそうだけど、ただの同級生をあいつだなんて」 「ん?ああ、芽衣は女子校にしかいってないから知らないのかな。例えば女の子が同じクラスの男子にはあいつとかあとは苗字呼び捨てなんだよね。で、女の子に対しては名前かあだ名で呼ぶのが普通だよ」 「なんだか下品なのね」 「げ、下品かうーん。あ、じゃあこれも知らないかな。教室で男女隣同士に座るんだよ」 「どうしてそんなことするのかしら?」 「だって共学ならまあクラスに男女半々じゃん?それを男女で半分にわけたりしたら大変だよ差別とか言われるんじゃないかなあ」 「それはわかったけど。その同級生の人とは何もないのね?」 「ないよー。芽衣はなんか疑り深いなあ」 「あなたが異様にモテるんだから仕方ないでしょ」 「は?あたしがモテるわけないじゃん〜」 けたけた笑う柚子を見てなんだかなあと思った。この無自覚なのがまたたぶん余計人を惹きつけるというのに。谷口さんや水沢さんとか名前を知っている人だけでもあきらかに柚子が好きな人が何人もいるのに、それに加えて2年生になってからなんだか異様に下級生に人気があるようで頭が痛いのだった。校内点検してるときに下級生が柚子のことを話しているのを何度も聞いたことがある。柚子のことだからきっとその子達に何か親切なことでもしたとかそんなかんじだろうか。一般の生徒なのにこの状態だからもし柚子が偉い立場ならもっと大変なことになるはず。柚子が成績悪くてよかったかもしれない。 恋人が人に好かれるのは(しかも恋愛的な意味で)それだけ魅力あるということだからいいことなのはわかっているけれど。でも嫌なものは嫌なのだ。たくさんの人に好かれる柚子の性格が好き。でも、私以外は柚子を好きになってほしくない。こんな考え矛盾してるのはわかっているけれど。 「芽衣?なんか険しい顔してるよ?」 柚子に言われてはっとなる。 「別になんでもないわ」 「うーん?もしかしてまだ疑ってる?どうしたらいいのかな?」 「別に私は何も・・・」 「あ、じゃあキスすればいい?」 「それ毎日してるでしょ」 「いいじゃんお願いだよ芽衣〜!」 「うるさいわねもうすぐ寝る時間だから早くしなさい」 「うんそうする」 近づいてきた唇に目を閉じて。不安が消えていくのを感じながら結局私が眠いからと言うまでキスをした。 |