今日は大晦日。で、もう夜なのだ。
芽衣と初めて過ごす年越しの夜(?)は、ものすごい地味だ。だって芽衣寝ちゃうんだもんなあ・・・。一緒にカウントダウンなどと考えてもみたけど、よく考えたら芽衣が起きてられるわけないのだ。昼間だってところかまわず寝てしまう芽衣が日付の変わる時刻まで起きてカウントダウンなんてできるわけない。
そう、今日だって一応あたしに付き合ってくれて頑張って起きててはくれたんだけど、一生懸命目をこすりながら眠らないように頑張ってる芽衣がいじらしくなってかわいそうになって、結局気にしないで寝るようにと言ったら眠気には勝てないらしく本当にすぐ寝てしまった。
まあ、そこがかわいいんだけどね。うん。いいんだ別に。こうなったら芽衣の寝顔を見てカウントダウンしちゃうんだから。でも起こしたらかわいそうなのでひたすら見ているだけ。たまに、ちょっと髪をいじったりして。そっと触ってみたりして。たまに芽衣がもぞもぞと動くので(寒いらしい)それがかわいくてなんか知らないけどやばいのだ。
10時に芽衣は寝てしまったから。今はもうすぐ11時57分。そろそろ心の中でカウントダウンしようと思う。しかし本当に地味な年越しだなあ今年は。・・・いやもしかしてこれから毎年こうなのかもしれないけど。2時間近くただ芽衣の寝顔を見てるだけ(たまに触るけど)で満足してるあたしは本当に芽衣が好きなんだなと思う。さて、カウントダウン数えたらもう寝るか。
なんて思ってたら。いきなり窓の外から怒鳴り声が聞こえてきた。なんだと思ったがよく聞くと隣の家の人が酔っぱらって騒いでる様子だった。まあ、普通騒ぐよね年越しだし。なんかパーティでもやってるんだろう。うるさいな、と思っていると。
「ん・・・」
「あ、芽衣?起きちゃった?」
今の声で起きてしまったんだろう。顔を覗き込むと眠そうな芽衣と目が合う。
「今、なんか音がして・・・」
「ああ。なんかね、外で騒いでるみたいだよ。いいよ、気にしないで寝なよ」
「あなたは寝ないの?」
「ん?あー。あたしはほら。まあカウントダウンしてから寝るから」
「もうすぐ夜中の12時ってことかしら?」
「うんそうだよ」
まあもう12時になっちゃってると思うけどいいや、仕方ないカウントダウンはまあ今年はあきらめよう。早く寝てしまう妹に付き合うのも姉の役目なのだ。
「・・・寒い」
「ん?ああ、なんか暖房ちょっと調子悪いんだよ、ごめんね芽衣」
なんて言ったら芽衣が抱きついてきた。
「ちょ、ちょっとあの、芽衣?どうしたの?」
「だって、あなた暖かいから」
「あたしはいつから暖房がわりにっ」
「・・・だめ?」
うっげ。なんだその可愛いのは。可愛くて死にそう、誰か助けて。
あたしは芽衣をそっと抱きしめた。
「これで寒くないかな?」
「ええ」
あーあ。こりゃ今日は眠れないな。嬉しいからいいけど。
暖房調子悪くてよかったのかもしれない。
これからあれだ。わざと部屋寒くしてこうして毎晩抱き合って寝るってのはどうだろう。いいかもしんないなあそれ。なんてことを思ってたらまた外から騒ぐ声が聞こえてきた。
「外、うるさいわね」
「うーん。そうだねえ」
なんかどうやらカラオケをやってるみたいだった。近所迷惑だなあ芽衣が眠れないじゃないか。と思っていると。
「こんな時間にどうして騒いでるのかしら」
「うん?まあほら、今日大晦日だからじゃないの」
「あなたも確か年越しがどうこうって言ってたけれど、どうして年越しで騒ぐのかしら」
「えー?だって楽しいじゃん!」
「何が、楽しいの?」
「いやそんなこと言われても。イベントだよイベント。しかしうるさいねえ外」
「そうね」
「芽衣、目が覚めちゃった?」
「ええ」
「じゃあさ、ママももう寝てるだろうし・・・」
「だめ。お母さん起きるかもしれないでしょ」
「なななんでわかるの、あたしまだ何も言ってないよ!?」
「わかるわよ、今までの行動からして」
「えー。だめ?どうしてもだめ?」
「だめ」
「うえー。芽衣としたいよー」
「おとといしたばかりじゃない」
「え?何言ってんの毎日でもしたいよ?」
「・・・バカじゃないの」
「えー?芽衣もしたいでしょ?」
「いいえ」
「そ、そんな・・・。あっじゃあさ!」
「?」
「キスだけなら、いい?ね、いいでしょ?ね?」
一生懸命お願いするあたしに芽衣はため息をつく。
「・・・仕方ないわね」
「やったー!じゃいただきまーす!」
「私は食べ物じゃないのだけど・・・」
そう呟く芽衣を引き寄せて唇を押し付ける。
最初は触れ合うだけだったけどやっぱりそれじゃ物足りない。
舌をそっと唇の間から割り入れて芽衣の舌と絡めあう。
熱くて、溶けてなくなってしまいそうな感覚がやみつきになって夢中で芽衣の口内をかき乱す。
「ん・・・っ」
息継ぎの時に芽衣が可愛い甘い声を漏らすもんだからもう大変だ。芽衣の可愛さに、このまま気がおかしくなるんじゃないかと思いながらキスを続ける。
「・・・っ、柚子」
「え?何?」
息継ぎで唇が離れた時に芽衣が抗議するようにあたしに言う。
「もういいでしょ」
「えー!やだ!もっとキスするんだもん!」
「だって・・・」
「ん?だって、何?」
芽衣は困ったようにつぶやく。
「眠れなくなるから・・・」
「え?興奮しちゃうからってこと?」
「・・・あなたね」
「あ、そうか!これ以上キスするとエッチしたくな・・・って痛い痛い!背中つねるのやめて!」
「静かにしなさい、お母さん起きてきたらどうするの」
「わ、わかったごめん。・・・あ、寝なくて大丈夫?」
「もう少ししたら寝るわ」
「そっか。うーんじゃあ・・・」
「?」
「もう少し、キスしてもいい?」
「・・・仕方ないわね」
「わーい!じゃいただきまーす!」
「だから、私は食べ物じゃないのだけど」
で、キスしようとしてふと思いつく。
「あっそうだ」
「?」
「・・・今年もよろしく、芽衣」
「ええ。よろしく」
結局芽衣が眠いから、と抗議するまでキスを続けた。

・・・来年も同じように年越ししようね、芽衣。



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