今日はハロウィン。どんな日かは知ってるのだけど今までは自分には関係ない日だと思ってた。でも、今年は違う。あたしには芽衣という恋人ができたから。
それがどうしたかっていうと、ハロウィンで恋人同士で何をするかっていうのをドラマや映画や漫画などで知ってるから。恋人ができたら絶対やりたいと思ってきた。で、めでたく今年は恋人ができた。
だから、今年こそは夢にまで見た恋人同士でハロウィン・・・!!と、思いたいところなんだけど。
あたしは盛大にため息をついた。
そう、まさか肝心の相手(?)がハロウィンを知らないという事実に頭を悩ませる。いや知ってるかどうか確認したわけじゃなけど、たぶん芽衣はハロウィンなんて知らないだろうしなあ・・・。
「何、柚子。ため息つきながらご飯食べちゃって」
「いやあの!・・・ううん何でもない・・・」
気づけばもう夕飯時。ああ、一日が終わってしまう。この様子だとママも今日がハロウィンだと気づいてないな。まあ家族でハロウィンで何かやることもないから無理もないけど。
芽衣にハロウィンを説明したところで「そう」で終わりそうだ。あーあ。仕方ない、来年こそはなんとか芽衣に事前に説明して、それで。それで・・・!!。
「ごちそうさまでした」
そう言って芽衣が食べ終わった食器を持って立ち上がる。
「え?芽衣早いねえ」
「何言ってるの柚子、ママももう食べ終わっちゃったわよ」
「げ!!」
いかん。考え事してたから食べるのが遅くなってしまった。急いでキムチとご飯をほおばる。あ、食べるラー油もかけようそうしよう。
がつがつ食べてるあたしに、芽衣がこんなことを言う。
「・・・あなた、宿題はもうやったの?」
「へ?宿題なんて今日あったっけ・・・?」
目を丸くして尋ねるあたしに芽衣はあきれたようにため息をつく。
「わ、わかった。後でやる〜」
そう。と呟いて芽衣は部屋へと去っていく。あたしはとりあえずご飯を食べ終えることにした。

で、もう夜。宿題に必死になってたら寝る時間になってしまった。
仕方ない大人しく寝るか・・・。何にもないハロウィンだったけど来年こそは。なんて考えてると。
「・・・柚子」
「うん?」
芽衣が近寄ってきて何だ?と思ってると。
「これから言う、質問に答えて」
「うん」
「・・・絶対に答えて」
「わ、わかった」
質問はいいんだけど何でこんなに接近してくるんだろう?何かこれって迫られてないか??そんなことを思いながら芽衣の言葉を待つ。で、次の芽衣の言葉にあたしは腰が抜けるほどびっくりする。
「Trick or Treat?」
ちょっと。ちょっと待てこれって・・・。
必死に頭をフル回転させる。この質問に答えなくては。
たぶんこれであっているはずだ。
もう、息がかかるほど顔が近い。
「trick please」
そう答えたとの同時に押し付けられる唇と激しい口づけに、あたしは芽衣の背中に手を回してこたえた。

「ねえ、芽衣」
「・・・何?」
眠たそうな声の芽衣にあたしは尋ねる。
「今日がハロウィンだって知ってたの?」
「いいえ。知らなかったけど」
「え?じゃあなんで・・・」
「昼休みに学校の中を歩いてたら、『今日はハロウィンだ』って騒いでる子達がいて」
「うん」
「で、恋人とこんなことをするんだって大声でしゃべってたのを聞いたから・・・」
なるほどそうだったのか。ふむふむ。一人で納得してるあたしに芽衣が聞いてくる。
「あなたは知ってたの?」
「うん」
そう、こちらを向いたまま呟く芽衣の目はもう半分閉じている。こりゃもうすぐ寝るなと思った。
「あ、そうだ。来年はあたしからいたずらしてあげるからね!」
と言って芽衣を見るともうすやすやと寝息を立てて眠ってしまっている。
その寝顔が可愛くて、あたしはそっとその髪を撫でた。
「・・・来年も、その先もずっと一緒にいようね」








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