色々なことを柚子が解決してくれたおかげで今私は幸せな生活をおくっている。何一つ問題などもうない、と言いたいところなのだがこれがひとつあるのだ。それは柚子が家柄に縛られて無理やり政略結婚させられそうになっていた私を救い出したという噂が広まり柚子がかっこよくて素敵な人だと思われてるようですごい人気がでてしまったことだった。まあ私が柚子と同じ教室に戻ったことから噂が広まったらしいけど。しかも柚子は下級生に話しかけられても気さくに答えたりするためさらに人気が高まってしまった。
さらに噂が独り歩きしているようで柚子が夕飯の買い物してるのを目撃した下級生達が「柚子先輩は料理もできる」と話してたりとにかく
もう下級生の間では柚子は有名人らしい。
私が頭を悩ませるのは人気がただの人気ではなくモテる、つまり恋愛感情をたくさんの人にもたれてしまってることだ。柚子がモテるのは今に始まったことではないが最近はちょっとあまりのモテ具合に嫉妬心でおかしくなりそうになる。いや恋人が皆が好きになるほどの魅力があるのはいいことなのはわかっているのだが。
なんて考えていると。
「あ、会長ちょうどよかったちょっといいか?」
振り向くと谷口さんがいた。
「ええ、いいわよ」
「あのさ、ユズっちの人気がすごいの知ってるか?」
「ええ知ってるけど・・・」
「あれなんとかなんないか?」
「?」
意味がわからず首をかしげると谷口さんが困ったように言う。
「毎日のように下級生から『これ柚子先輩に渡してください』ってラブレター渡すの頼まれるんだよ」
「そうなの?」
そこまで柚子はモテているのか。ちょっと異様すぎる気が。
「どうして柚子に直接渡さないのかしら?」
「いやたぶん緊張するから友達に頼むんじゃないか?渡すのも恥ずかしいくらいユズっちが好きみたいな」
「・・・」
「おい会長怖い顔するなよ、大丈夫あたしが適当に処理してるからさ」
「処理?」
「そうそう。ラブレターは捨ててその子達にはユズっちには恋人いるからあきらめろって言ってるんだよ。まあ嘘じゃないしな」
「私は渡されたりしないけど何故かしら」
「いや生徒会長には渡せないだろ普通」
「谷口さん迷惑かけて悪いわね」
「別に友達が人気あるのはいいことだし平気だよ。しかしユズっちがこれだけモテると会長も気が気じゃないだろ?まあユズっちが浮気なんかするわけないけどな」
「そうね、だいたい柚子は自分が人気あるなんてわかってないもの」 
「いやだからその飾らないところがまた好かれるんだろうなあ。あ、ところでちょっと聞きたいんだけどさ、ユズっちが修学旅行のときに告白うまくいったとか言ってたからあのときから付き合い始めたのか?」
「ええ」
「だったら普通告白相手がOKしたなら相手が自分のこと好きなわけじゃん?なのに会長の気持ちわからなかったっておかしくないか?」
「そうだけれど柚子は鈍いから仕方ないのよ」
「いやいくら何でも鈍すぎじゃ・・・」
と話してると教室に柚子が入ってきた。
思わず谷口さんと私は同時に口を閉じる。
「ん?どしたの2人とも変な顔して」
「い、いや何でもないよな!会長」
「え、ええ」
「あ、芽衣一緒に帰れるの?」
「ええ」
「やったー!あ、はるみんも一緒に帰る?」
「あーいいってあたしいたらジャマだろ?」
「え?何が?」
「ちょっと柚子、谷口さんは気を使ってくれてるのがわからないの?」
「??」
不思議そうな顔をしてる柚子の前で私と谷口さんはため息をつく。
「まあそのなんだ、いいから会長と2人で帰れよ」
「うん?なんかよくわかんないけどそうするね」
わからないのかよ。という谷口さんの心の声が聞こえた気がした。

帰り道は手をつないで歩く。それは別にいいのだが呑気に鼻歌歌いながら楽しそうに歩く柚子を見て愛おしいのと同時に憎たらしくなる。柚子は自分がモテすぎるせいで私がつらいのをわりもしてないのが腹立たしい。いや柚子は何も悪くないのはわかってるけど。ラブレターをもし柚子が直接受け取るとしたら柚子はどう対処するのか。考えただけでどうにかなりそうでため息をつくと。
「芽衣疲れた?大丈夫?」
大丈夫とうなずいただけなのによかったと言って嬉しそうに笑う柚子。こんなに優しい恋人に対して嫉妬して恨む自分が恥ずかしい。
なんて思いながら歩いているとふと急に柚子が繋いでいた手を離す。
「柚子?」
柚子から手を離すなんて初めてだから少し驚いていると。
「今日暑いしあたし汗かきだから手に汗かいててその・・・」
「別にそんなこと気にしないわよ」
「でもなんか悪いような、その」
私は強引に自分から柚子の手を握った。
驚いたように私を見る柚子。
「好きな人の汗が嫌いな人なんていないんじゃないかしら」
そう言うと柚子は真っ赤になって俯く。
「芽衣好きとか言ってくれるようになったのは嬉しいけどなんか慣れないから心臓に悪いなあ」
「じゃ控えるわね」
「うわ!ち、違うよ!控えたら嫌だ!!」
「わかったから大声だすのやめなさい」
「芽衣〜!!」
「叫ぶのもやめて」
なんて言い合いながら手を繋いで家に帰る。
柚子の手はやっぱりかなり汗ばんでいたけれどそれに触れることは逆に嬉しく感じたりするのだった。

寝る時間なので2人で布団に入ると。
「あのさ芽衣、少し話ししてもいい?」
「ええいいわよ」
「なんかさ、芽衣もはるみんもよくあたしがモテるほうだとか言うけどもしかしたらその通りかなって最近思うんだよね、だって最近やけに学校で特に下級生の子に声かけられるから」
「その理由はあなたはわかっているの?」
「いやそれがわからなくてさ」
「簡単よ。私があなたと同じクラスにまた戻ったでしょう?それをあなたが私を助けたりしたって皆が思ってるからよ」
「あ、そうかなるほど。まあじゃモテるってつまりまあみんながあたしに好意、つまり恋愛的に好きなわけだよね。なんかはっきり言って不愉快だよあたし」
「不愉快?何故?」
「だって。その人達はあたしの何を知ってるのかな?せいぜい名前と見た目ぐらいでしょ。あたしの中身は何も知らないのにあたしに恋してる?それってバカにしてない?勝手にあたしを理想の人間像に頭の中で作り上げて。テレビで見るアイドルに恋してるようなものじゃん」
柚子の考えにひどく納得する。鈍いけれど本質はわかっている人なのだ柚子は。
「だから芽衣嫉妬しなくて大丈夫だよ」
「わかったわ」
「じゃ、安心してもらうためにもキスを」
「別に毎日してるじゃない」
「そういう細かいことは気にしない!」
「いいけど、私明日朝早いから控えめにしてちょうだい」
「うん、わかった」
結局いつものように日付がかわる時刻までキスをするのだった。





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