約半年以上ぶりに来た、柚子とそして私の家。今日は色々あったからもう夜も遅く部屋に入って寝るつもりだ。ちなみにお母さんは今日はお仕事でいないらしい。柚子がメイクだけ落としてくるからというのでひとりで先に部屋に入る。もう二度と来ることのなかったはずのこの部屋が懐かしくて。なんとなくベッドを見て目を見開いた。ちゃんと2つ枕が並べてあったから。つまり柚子は私のスペースをずっと残したまままた一緒になれる日を待っていてくれたのだ。思わず泣きそうになって目を閉じる。なんだか今日は泣いてばかりだ。柚子の泣き虫でも伝染したのかもしれない。とりあえずパジャマに着替えようとタンスを覗くとやはり私のパジャマもきちんときれいにしまわれていた。それを見た途端申し訳ない気持ちになる。柚子が実はずっとひとりで寂しかったことを知っているのに私はまた彼女をひとりにしてしまったのだ。柚子は「離れてる時の辛い気持ちも同じ」と言っていた。それにはひとりだから寂しくつらいという意味もあるはず。私は柚子の寂しい環境をわかっているのに別れを告げ離れた。いかに自分が罪深いことをしたのか思い知らされる。
「あー、顔洗ったらさっぱりしたなあ」
柚子がそう言いながら部屋に入ってきて着替え始める。
「芽衣疲れたよね、大丈夫?」
心配そうに言う柚子。疲れてるのはお互い様なはずなのに、やはりこの人は優しい。
柚子に大丈夫と答え布団に入る。
「・・・私の寝る場所開けてくれてたのね」
「ん?当たり前じゃんここは芽衣の家なんだからさ」
「だって、私は突然あなたから去って消えたのに」
「ああ。最初はびっくりしたけどノート読んで芽衣がいなくなった理由わかったから大丈夫だよ。結婚相手がいることの罪に耐えられなかったんでしょ?あと・・・」
「あと、何?」
「『姉妹』なだけも耐えられないんだよね?それはさっき芽衣が言ったから気づいたよ。なんかあたしほんと鈍いんだよねごめんね」
「別にあなたは何も悪くないわ」
「うんありがとう。あ、そうだ今日はもう遅いから明日にでもサラとニナに電話してお礼言っといて?あの二人が相談にのってくれたのがきっかけであたしふっきれたんだよ」
「わかったわ」
笑って、じゃあ寝るかななんて言って柚子が布団に入ってくる。
向かい合うと柚子が照れくさそうに微笑んだ。
「なんか夢みたいだね」
「・・・私もそう思うわ」
柚子がそっと手を握ってくれて。その感触と温かさがこれは夢ではないと教えてくれる。
「もうずっと一緒だからね芽衣、安心しておやすみ」
小さくうなずいて顔をあげると至近距離に柚子の真剣な眼差し。しばらくそのまま見つめ合って。近づいてくるそれを目を閉じて受け入れる。

・・・半年以上触れたいと恋い焦がれ続けたたその唇はやっぱり昔とかわらずとても熱かった。



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